お手入れの話の前に
伝えておくことがあります。
書道は、
「硯で墨を擦って書きましょう。」
言い換えると
「“墨汁”を使わない!」です。
小学生のころ
習字の授業のはじまりに
道具箱を開けると
筆がカチンコチンで使えなかった。
なんてこと
誰もが経験したことあるはずです。
私は、無理に毛を解そうとして筆を折っちゃったことが
何度もあります。
“墨汁”の場合、
「一度固まると水を加えてもなかなか元にもどらない」
性質があるようです。
なので
“墨汁”で固まった筆は、
綺麗にほぐすことができないため
二度と使用できなくなります。
(穂先が揃わなくなり綺麗な線がでなくなる。
根元が固まると、弾力がなくなる。墨の持ちが悪くなる。など)
特に使用後水洗いしない小筆は絶対ダメです。
筆だけでなく硯もダメになってしまいます。
新品の硯の、陸(墨を擦る部分)をじっくり見たことがありますか?
よ~く見ると表面が凸凹になっていてザラザラしてるのがわかりますよね。
この凸凹がヤスリの役目をして墨を削るので、墨が擦(す)れるわけです。
大根おろしの要領ですね(笑)
“墨汁”を使うと凸凹の目を埋めて固まってしまい、
表面がツルツルになるために、墨が滑って擦れなくなってしまいます。
水で洗っても目の中に入り込んだ墨汁が溶けないので、
元に戻ることはありません。
豪華な彫刻を施した高級硯でこうなっては目も当てられませんね(泣)
どうしても再生したい場合には、
表面を専門家に削り直して貰うこともできるようですが
削った分、硯が薄くなるので元どおりとはいきません。
これまでは、道具がダメになる話で
お金をかければ(買い替えれば)済むことでしたが
他にも、寧ろもっと大事な理由があるのです。
「作品を創る場合に、避けられないマイナス点がある。」
ということです。
“墨汁”は「真っ黒」過ぎるのですよ・・・色が!
本来、擦った墨で書いた文字は、ほんのりと茶色っぽく見えるものです。
(青墨は、もちろん青っぽい)
その微妙な色合いが「美しい」となるのです。
特に仮名の場合は、墨の色が作品全体の雰囲気・印象を決めてしまいます。
というわけで、
書道では、
「硯で墨を擦って、書くようにしましょう。」
墨を擦った場合でも、使用後は墨が固まる前にすぐ
筆も硯も水で洗ってしまいましょう。
道具を快適に使い続けるコツです!
筆のお手入れ方法について分かりやすい説明を見つけたので
紹介しておきます。
太筆・細筆・穂先が割れる場合について写真つきです。
太筆のお手入れ方法の説明動画を見つけたので合わせて紹介します。
ただし、筆を洗うだけで、なんと9分30秒もあるので、こころして見てください。
東宮たくみさんの「毛筆をキレイにする洗い方」です。
Ps:「墨の持ちが悪くなる。」とは、
筆で書いてる途中で、すぐに墨が出てこなくなって
掠(かす)れ過ぎてしまうこと
(作品を作るとき、滲(にじ)みと掠れのギャップで面白さを出します。
この時、掠れの部分を多くした方が、作品全体が明るい印象になるし、
線にスピード感が出るので好まれます。
ただ、掠れ過ぎると線と認識できなくなってしまいます。
ですから、掠れた線を長い時間書ける、墨の持ちが良い筆が好まれるのです。)